「A Home at the End of the World」

イノセント・ラブ [DVD]
邦題は「イノセント・ラブ」。(・・)ゲッ。
(ネタバレあり)
すでに黄昏れてきた。二人が見つめるホームの窓があたたかな灯りで輝いている。このエンディングの窓の灯りというホームを象徴するだろうイメージはあたしを途方に暮れさせる。それは昔からあたしの中にあって、たぶん失望の代償なのだ。スラヴォイ・ジジェクがいうように、始めから無かったものを、喪失したと思うことによって、あたしはソレをメランコリーとして手にするのだ。

あたたかな窓の灯りの家(=ホーム)の中には何もなかったのだと知っても、家(建物)は残るのである。その建物のイメージがあたしを戸惑わせる。中にどんな精神を入れたらよいか分からずともドアは開け閉めされねばならない。

ボビーとジョナサンが見つめる家は、新しい輝きに満ちている。二人は「りっぱな家を建てたね」と言い合うのだが、クレアと子どもの窓の灯りは消えたままだ。4つの窓の灯りのどれかがついたり消えたりするのをホームは見続けることになるのだろう。

ボビーの心の底にあったのかもしれない、「家の輝きへの希求」は、たとえそれが、すぐにでも形骸化してしまうものであっても、マトリックスの中を機械的に漂うシニシズムアイロニーを笑い飛ばすものだった。