スクリューボール・コメディ

ダーマ&グレッグ シーズン1 DVD-BOXフレンズ〈ファースト〉コレクターズ・ボックス【DISC1~6】 [DVD]
加藤幹郎氏の『映画ジャンル論』asin:4582282326を読むと、あたしのお気に入りであるこれらのTVドラマシリーズは、「スクリューボール・コメディ(SC)」というジャンルになるんだとおもう。けれど(映画てきには)、加藤氏によれば「ローズ家の戦争」をもってして、「55年間におよぶスクリューボール・コメディのジャンルの命脈もつきるのではないか」とある。ところが、このジャンルは、TVドラマという環境においてますます盛んなのではないかと。「フレンズ」の登場人物の一人は古生物学者で、女性の一人は富豪の家出娘。「ダーマ&グレッグ」は設定自体がもうもうSC正統派みたいだし、ドラマのなかでは「変人」という言葉が飛び交い、『毒薬と老女』の名が出されたりする。

加藤氏は言う。


スクリューボール・コメディが描く世界はもっぱら金持ちたちの世界であり、金融恐慌以後の貧富の接近が「持つ者」と「持たざる者」との皮肉な邂逅と和解の物語を可能にする。(中略)スクリューボール・コメディはすでにアメリカン・ドリームを達成した旧移民たちの息継ぎの物語にみえる。つまり、スクリューボール・コメディは、たんに「持たざる者」の側に立って上流階級、有閑階級を笑いのめす風刺映画だけではないように思われる。それは大恐慌以前には「持つ者」への階梯を登りつつあった中間階級にとってのスノッブなノスタルジーの物語にみえるのだ。
「ダーマ・・」にしろ「フレンズ」にしろ、お茶の間という倫理規制が(過去の映画界のように)あるわけだし、公開録画というせいなのかどうかわからないけど、舞台となる台所や居間が開かれていて、そこに出入りする友人たちが疑似ファミリーかのような趣があって面白い。「ノスタルジーの物語」の心地よい笑いは、「かもしれない」可能性の物語であり、そうである限り、SCは永遠に不滅ではないかという気がする。