27日のこと

退院するときの嬉しそうな父の顔が目に浮かぶ。

自宅看護(診療訪問の看護士さんが毎日2時間、ドクターの往診が2週間に一回)の体制も整ったし、大丈夫だとおもった。ところがあたしは父を死なせてしまった。
あたしは連続してミスを犯した。あのときと、あのときと、気がつくべきだったんだ。

みんなは、あたしが父を退院させたことを悔いているのだと勘違いした。とんでもない。それは父がどれだけ家に帰りたがっていたか、家に帰れないことが父をどれだけ苛んでいたか知らないのだ。先の短い半病人でもシヤワセになる権利はある。あたしは父の退院を後悔しない。ただ、あたしは自宅看護の落とし穴にまったく気がついていなかった。

父は後一月、上手くいけば三ヶ月は生きられたはずだとおもう。でも父は希望通り、家で、(almost)亡くなった。あのときを乗り越えていれば、父はまだ生きていただろうけど、死ね時はあれだけ嫌がっていた病院だったろう。
あたしは、父が死んでしまったら悲しいだろうと思っていた。こんなに苦しい後悔をするとは思っていなかった。