ゴロンとした女


新人に、今、仕事を教えている。あと、もう一人、増えるらしいが、この43歳の新人(女)は、みんなが、「何かの間違いでこのショップに回されてきたか、一時しのぎでしょ?」と、言ってしまうような人で、お洒落が信条の売り場にもっすごい違和感をもたらす姿の人で、ゴロンと太っていてひどいガニマタで(ショップのエプロンの後ろボタンが止まらないので





外したままエプロンをかけている)、顔の真ん中がへこんでいて、あたしが何を言ってもニタニタニヤニヤする・・。昨日気づいたのだが、(その人は背が低いのでレジを教えていると頭のてっぺんがあたしの目の下にある)、ベッタと油っぽい髪にフケがでていた。
その人は何を教えてもあまりにも酷い忘れかたをするので、あたしはマニュアルを作った。その人は朝の仕事(レジの準備と店内の準備だが)、その段取りを憶えられない。

休日、あたしはマニュアルをつくりながら、仕事とは言えないような朝の準備を事細かに書いたあと、本来の店員の仕事であるVMD(本部から1か月に2.3回降りてくる企画書に添って商品展開)をし、商品知識を磨き、商品の動きを見、地元独自の工夫をし、お客さまの相談にのり、楽しく買いものをしていただく努力をする、ということについても、書くべきかどうか悩んだ。
というのも、雑貨好きなら、嬉しそうに簡単にこなす「ラッピング」や「ディスプレーしながらの品出し」という基本のことがその人はまったくできないからで、雑貨が好きだとはったりを言ったんだろうけど、その人はきっと、あまりにも自分にむいていない仕事に就いてしまったと困っているだろうな、と考えたわけで、だけど、結局、困難だと思われる仕事のことも書き込んでおいたし、ショップのコンセプトもおまけでいれた。
それは、ラッピングの練習の時にリボンがうまく結べないその人に、「あたしも不器用なんだ」と慰めたら「わたしは器用な方です」と言ったからで、なんだかどーもその人と居るとこの仕事もあたしも馬鹿にされているような気がしてくるからなのだ。


でも、マニュアルを説明していたとき、やっぱり可哀相になり、「この大型店ではレジ操作をマスターすれば、重宝されるからね。レジ、がんばろうね。ディスプレーとか、得意じゃないようだから。」と、あたしは思わずいったわけで、そしたらその人は「ディスプレーも出来ます」と言った。

なんというか「自分はこの仕事のここが出来ていない、ここが向いていない」ということが全然わからないようなのだ・・・。あたしはそれをどー理解していいかわからない・・。


この泣きたくなる、その人が採用される前、専門学校の夜学に通っているという16歳の女の子が応募してきたのだけど、マネジャは断った。「学校でていないから」だそうだ。でも、即戦力になりそうな子だった。だけれども、一目みれば向いていないとわかる(とみんなが言っている)あの人は採用された。
マネジャは「俺は見てない。人事部が採用した」と言っている。