「グッド・シェパード」

グッド・シェパード [DVD]
すっごく面白かった!

「良き羊飼い」ってアイロニーだよなあ、とおもう。
CIAという組織に対してシニカルなことばがちりばめられているし、もっとも、アメリカでCIAがどう受け取られているか、とか、聖書の「良き羊飼い」ってことばの意味とか、あたしはしらないけど、でも「良き羊飼い」ったらやっぱメシアのことでしょぉ・・?

だからこの映画は簡単にいっちまえば、ロマンチック・ラブを捨てざるを得なかった主人公がCIAの仕事に没頭していく半生を描いているわけで、彼が人生を捧げたCIAの仕事に対して、実は根本的にアイロニカルなわけです。このメシア的、「良き羊飼い」の志向を持つ男性たちに一番アイロニカルなのは「ボーンズ、神様より先にボーンズ」と呟くマーガレットです。

で、この映画は2時間45分だかもあって、デニーロは、じっくり俳優の演技を見せてくれていて、だからというか、さすが世界的な役者たちは、みんな素晴らしい。
特に、アンジェリーナ・ジョリーはすごい!夫から顧みられない妻マーガレットがどんどんうらぶれていく様は見事!

わからないのは、結婚前のマーガレットは、我が儘でお転婆であれほど生き生きとしていた人だったのに、何故、離婚しなかったのか?ということは、あの時代のアメリカの上流階級の結婚ってのは、実利的で、家柄同士が結びつく、ということが大事だったのかなあ?

あとひとつ、主人公が父親の遺書を取り出したとき、束の一番上にあったオペラかなにかのチケットは、やっぱ、あの初恋の女性と密会しようとしていた時のチケットかなあ?そうならば、あたしは許せないなあ。だってそのばかったれなロマンチストぶりが、妻を無視させたんだよ。だって、あのマーガレットは家柄的に男たちが家庭を顧みず、仕事優先であるということに慣れているはずで、ほんのちょっと、彼女を愛してやるだけで、彼女は充分、幸せになれたはずだのに。