『インストール』

インストール
芥川賞を受賞した『蹴りたい背中』(綿矢りさ)は売り切れだったので『インストール』を買ってみる。
面白い!すごい!昔、名作全集なんてものがあって夏目漱石とか芥川龍之介とか太宰とかのいわゆる文学者といわれる人たちの全集シリーズなんてものがあったのだけど、あたしはそうゆう文学者の文章を読んでいるような感触を持ちました。新鮮です。
このお話は、高校生の女の子(朝子)が学校生活からちょいと逸脱してみる風景のようなものが描かれています。朝子のちょっとした逸脱は登校拒否というようなオオヤケゴトではなくて、昔で言うところのエスケープに近い感じです。朝子はクラスメイトの女の子達のヒステリックに響く笑い声が教室の窓ガラスを震わせるのをぼんやり見ているだけですが、一緒に仲間になって笑ったこともありそうだし、結局は元の学校生活に戻りそうです。朝子にはそういうつるんとした襞のない綺麗さがあり、それは何かに属しきることができない浮遊感のようなものかもしれないのですが、もちろん、本当に登校拒否になったり本当に大人を裏切ったりするには物事が見えすぎるのかもしれない。そしてこうゆうあたしの感想というのは朝子とかずよしを経て、裏表紙の写真のアイドルか女優さんのような実に可愛らしい美少女へと結実していくのです。(笑)