アメリカの金融政策とは

昔は過去ログが載ってたんだけど今は最新しか置いてないのよね。村上龍のブログ*1
下に転載してあるのは村上博美さん(ワシントンDC在住 シンクタンク研究員)のもの。

転載
「最近のドル安に伴い、ワシントン界隈の米国人の間で危機感が高まっている。目下の関心の的は、アメリカ及び世界経済の構造的問題、つまり、自分たちで稼ぐ以上に消費するという歯止めのかからない米国の経済構造、それによって膨れ上がる米国の貿易赤字、軍事予算増大等による財政赤字の悪化、そして米国の消費超過に頼る世界経済、ドル資産がユーロへシフトし対米投資が減る一方、その構造を支えんがための中国・日本などによる大量のドル買い及び米国債購入、というように皆がぶら下がっているシステムを必死で支えている現状だ。「このままではいけない」と言いながら、ただただ身を任せていることへの焦燥感、かといってパズルの一つを崩したところで事態が悪化する場合があり、効果的な解決策も見つからないという無気力感が漂うところではないだろうか。
この問題の側面は、ヨーロッパがとった解決策(統一通貨ユーロの実現)にも関係している。既に70年代からヨーロッパでも輸出主導の経済が、ますますドル為替レートに左右され易くなり、基軸通貨ドルの優位性を利用し突如としてシフトするアメリカの金融政策に翻弄されてきた。「もう、アメリカの自分勝手な金融政策に振り回されてたまるか」という思いがヨーロッパ通貨安定のための通貨統合のインセンティブの一つになったという。特にドイツ・フランスががっちりと意識を共有し、その指導力が強力なユーロ実現の推進力となった。80年代の軍事費増大による巨額の米国の赤字は、究極的にはソビエトを崩壊へ導いたとはいえ、ヨーロッパと日本のマネーが流れ込んで初めて成り立っていた。ユーロというドルに対抗する通貨ができた現在、イラクや国土安保関連の支出増大による米国の財政赤字を誰が穴埋めするのか。
日本も80年代からの円高で購入済米国債の価値が目減りし、相当痛い目に遭っているのになぜ盲目的にドル依存を進めるのか、アメリカ人から見れば不思議でならない。昨年末のイラク復興のため総額875億ドル(約9兆6250億円)の補正予算案に対しても、米国内では非難の声が上がっているのに、日本は為替介入で軽くその倍の額をつぎ込んでいる。しかも、あれだけドルを買っても日本の構造的経常黒字により圧力が常にかかるので、短期的には為替が動いても中長期の円高傾向は変えられない。昨年だけで20兆円も為替介入に使うなら、逆に通貨安定のためのアジア統一通貨の構想にその十分の一でも割り振るという選択肢があってもいい。アジアが望めばそれによって、アジアの相対的な政治的発言力も増すはず。介入のお金はどこへ行ったかわからなくなってしまうが、構想やアイディアは育っていくのだ。「日本は円安にしたいようだけど、円安で恩恵のある輸出はGDPの1割しかない。なぜそれだけのために巨額のドルを買い続けるの?」「僕が日本政府だったら、リスク分散するためにこれ以上ドル依存を進めない方法(つまり米国の政策に左右されない自己防衛策)を考え、ドルに翻弄されない地域通貨安定のためのアジア統合通貨の検討を始めるけどな」とは同僚の言葉だ。為替の安定が地域経済に有益だという意識を中国と日本が共有すれば、フランス=ドイツのように行動することは不可能ではないような気がするが。」
(同僚とは亜米利加人のことと思われる。)


わたしの推測だけど、日本の官僚はとうにそうしたことは考えていると思うんだよな。カルロス・ゴーンが言ってたけど、日産を立て直すために自分(ゴーンさん自身)が考えつくこと、それ以上の綿密なプランの数々はすでに日産の社員は持っていた、と。ただ、それらの案を徹底的に実行しなかっただけだと。実行に際して、反対者を考慮してどんどん折衷案に移行する結果、元々のプランが持っていた効力が決定的に失われる。これって日本社会は良くも悪くも自由主義的なんだということだよね。(ゴーン氏が全責任を負う強い牽引型、リーダー型の対極にある、という意味においてだけど)。