『日本とフランス 二つの民主主義』(薬師院仁志)(1)

日本とフランス  二つの民主主義

この本、教科書に使えばいいのにな


国家が個人の幸福を実現するための手段でしかないのなら、愛国心など不要である。しかし、国民の間に社会的連帯を求めるのであれば、何らかの形の愛国心を前提とせざるを得ない。愛国心の重視自体は、特に右翼的な主張でもなければ、軍国主義的に直結する思想でもないのだ。
むしろ、民主主義が自由主義から解放され、国家的支配に対する個人の自由ではなく、国家的支配に各個人が参加することが求められるようになったとき、社会民主主義的な愛国心が登場してくるのである。(141p)

愛国心」を、民主主義の対立的な概念である「平等」と「自由」の系譜?から説いてあって、すごく新鮮。感動!

息子たちは小林よしのりの『戦争論』に好感を持っていて、あたしは腰を抜かしたことがあるんだ。つらつら思うに、彼らの何らかの「連帯感」なり「助け合う心持ち」なりが −これは学校教育の中できちんと育つと思うし、あたし自身も彼らに「人は助け合わないといけないよ」と言ってもきた− そういった彼らのちいちゃな公共的な信念が、成長するにつれて行き場を失っているとおもう。それがよしのり氏の侵略戦争肯定、美化、みたいなマンガに絡め取られる一つの要因なんじゃないかなあ?ウチのガキどもはなにも侵略の歴史を美化したいわけじゃない、それが問題じゃないんだと話してみてわかった。たぶん、彼らは愛国心というかよしのり氏の誇りにシンパシーを感じたのではないか。

今の日本で「愛国心」といえば、戦争の歴史がからまってきて、過去に愛国心という感情がどのように政策と結託して悪さを為したのか、そゆうことばかり教えられる。
この本のように政治的方法論(民主主義における平等と自由)のなかで、しっかりと位置づけられたのをみたのは、あたしははじめてだ。なんていうか、あたしごときではよくわかっていないのかもしれないけど、靖国だ、右翼だ左翼だと、ごったまぜの泥沼にきれいに水はけの水路をつけたかんじがするのだ、この本は。その先に「八紘一宇」思想の危険性なりなんなり考えていけばいいのじゃないかしら。もしこの本が右翼すぎるという批判があるのなら、なんていうか、もう、日本の政治って出口なしだよってあたしなんかはおもうんだ。

フランスで起きているイスラム教徒のフラール(頭巾)問題についても、目からうろこ。だらけなんだけど。(笑


繰り返すが、フランスで起きている問題を、単なる宗教対立や人種対立に還元してはならない。移民と古くからの国民との間の摩擦にしても、単なる民族対立ではない。むしろ、そこにあるのは、普遍主義とコミュニティー主義との摩擦である。フランス流の普遍主義は、移民やその子孫たちを、自分たちと同じ個人として尊重しこそすれ、彼らをアラブ人として、イスラム教徒として尊重することはなかったのである。